2020.05vol.14
木々もすっかり芽吹き、新緑の葉が茂る季節となりました。 暑い夏、寒い冬に比べ比較的肌の悩みの少なくなる春ですが、一年を通して変わらず伺うのが髪や頭皮のお悩みです。肌のお手入れや髪のセットに気を遣っていても、髪や頭皮のケアはあまり考えない方が多いのではないでしょうか。今回は皮膚科医の立場から、「ヘアケアは頭皮ケアから」をテーマにお話をしたいと思います。
頭皮のトラブルの中で一番多く拝見するのはかゆみです。 頭皮のかゆみは様々な原因で起こりますが、頭部に湿疹ができたり、皮脂が多かったり、反対に少なくて乾燥してしまったり、ということが多いです。放置しているとふけが出たり、浸出液が出たり、細菌や真菌が増えたりして、脱毛や髪の異常につながることもあります。早めに皮膚科で相談することをお勧めします。
普段の生活でできる手軽なヘアケアとして、まずは毎日の洗髪を見直すことから始めてみましょう。当然ですが、シャンプーは髪や頭皮の皮脂を落とすものです。皮脂が残っていると臭いやべたつき、またかゆみや薄毛の原因にもなります。皮脂の多い方は適度に洗浄力のあるシャンプーでしっかり毎日洗髪しましょう。乾燥しやすい方は皮脂を取り除きすぎない低刺激のシャンプーを使い、優しく洗いましょう。尚、シャンプーを変えて赤みやかゆみが出た場合は接触皮膚炎(かぶれ)の可能性がありますので注意してください。
次にシャンプーの仕方です。入浴前に髪をとかし、髪の絡まりを取っておきましょう。次にぬるま湯で頭部全体と髪の内側までしっかり流します。十分に髪と頭皮を濡らすことで髪や頭皮の汚れを落としやすくなります。さっと濡らすだけでは表面にしか水分が行き渡らず、シャンプーが泡立ちにくくなり効果が弱まりますので十分に濡らすようにしましょう。
次にシャンプーですが、既定の量を手に取り、手で軽く泡立ててから髪に馴染ませて洗います。爪を立てず、指の腹をしっかり頭皮につけて優しくくまなく洗浄します。爪が長く指の腹で洗いにくい方はシャンプーブラシの利用をお勧めします。強く押し付けないようにしてこまめに動かして使いましょう。髪の生え際、耳の後ろは洗い残しやすい部分ですので意識的に洗うようにしましょう。最後に良く流します。泡が残らないようしっかりすすぎましょう。
リンスやコンディショナー、トリートメントは頭皮にはつけず、毛先を中心に馴染ませます。そしてこちらも残らぬようしっかりすすぎます。洗髪後は根元を中心にしっかりタオルドライします。髪同士をこすり合わせないようにタオルを押し付けてしっかり水分を吸い取ります。必要であればドライヤーを素早くかけて髪を乾かしましょう。
次に薄毛についてです。薄毛の原因は様々です。
・加齢に伴うホルモンの影響
・産後
・頭皮の炎症(脂漏性皮膚炎など)・湿疹・カビなどの疾患
・シャンプーや整髪剤、髪染剤の接触皮膚炎(かぶれ)
・ストレスや体調不良
・頭皮の血行不良 など
がよく拝見する原因です。
まずは炎症やかぶれがないかをチェックしましょう。赤みやかゆみ、フケがあったら何らかの疾患が考えられますので皮膚科受診をお勧めします。 抜け毛には血行を促進する頭皮マッサージが有効です。頭部全体を五本の指でまんべんなく押して、頭皮を小さく動かすようにマッサージしましょう。この時爪を立てたり強くたたいたりすると逆効果になることもありますので気を付けましょう。 またタンパク質やビタミン類を多く含む食品をとりバランスの良い食生活を心がけることも有効です。タバコは血行を悪化させますので控えましょう。
次に、頭皮の乾燥についてです。 ほかの部分と同じように寒い時期には頭皮も乾燥しやすくなりますが、季節にかかわらずいつも乾燥しやすい方もいらっしゃいます。かゆみがない場合が多く、気づかず悪化してかゆみやにおいの原因になることもあります。 洗髪時の洗いすぎと乾かしすぎが原因であることもあります。シャンプーは既定の量を使い、優しく洗いましょう。シャンプーの量が多かったり、何度も洗ったり、ごしごし洗いすぎたりすると必要な油分まで奪うことになります。
また乾かす際、ドライヤーは頭皮にあてずに行いましょう。 自然乾燥も頭皮の乾燥を悪化させることがあります。水分が蒸発する際に頭皮に必要な水分まで蒸発することがあるからです。タオルドライはしっかり、ドライヤーは短時間、を心がけましょう。それでも乾燥する場合は頭皮に保湿剤を使うと良いでしょう。 頭皮が健康になると健康的な髪が生えやすくなります。髪や頭皮の状態にもよりますが、きれいな髪への生え変わりには3か月から1年かかるといわれています。シャンプーやマッサージ、保湿などの日常的な手軽な頭皮ケアを行い、きれいな髪を目指しましょう。
嵯峨 真輝 (さが まき)先生
学生の頃から小児皮膚科や女性特有の皮膚科疾患に特に興味を持って学んできました。私自身も妊娠・出産を経験し、子供を育てながら医師の仕事を続けております。