2021.02vol.20
梅の香りに心華やぐ季節となりました。
本日は皮膚のバリア機能とその低下の原因、予防についてお話ししたいと思います。
私たちの体の全体を覆っている皮膚は面積にして成人でおよそ約1.6㎡もあり、実は人体で最大の臓器なのです。
その役割は汗や皮脂の分泌、体温調節、触覚や温覚などの知覚など様々ですが、体の保護も大変重要な役割の一つです。
普段は意識しませんが、皮膚は体外からの刺激(刺激物質、微生物、紫外線など)から体を守るとともに、体内からの水分喪失を防いでいます。
もし皮膚がなかったら、私たちの体はすぐに乾燥し、傷つき、細菌に感染してしまいます。
この大切な保護の役割を担っているのは、皮膚の中で最も外側にあり外界と常に接している表皮の「角層」という部分です。
健康な皮膚の表面は角層の細胞内と角層細胞間にバランスよく水分と油分が存在し、隙間なく満たされています。
また角層表面に分泌された皮脂が膜を作り、その両方でバリアの役割を果たしています。
大切な皮膚のバリアですが、どのようなときにバリアが低下するのでしょうか。
主な原因は乾燥、刺激です。
外気の乾燥やエアコンの風で表皮の水分が失われたり、こすれる刺激や、紫外線も刺激となりバリア機能低下を引き起こすことが知られています。
ではバリア機能が低下すると皮膚はどうなるのでしょうか。
汗や摩擦などの外部からの軽い刺激でもすぐにかゆみや赤みの症状が現れます。
これを一般に「敏感肌」ということが多いでしょう。
また皮膚表面の水分が保てなくなり、肌が大変乾燥しやすくなります。これが「乾燥肌」です。
バリア機能を失うとこの「敏感肌」と「乾燥肌」の両方の症状が同時に出ることが大変多いです。
中には湿疹を併発し、掻き傷から細菌感染が起こることもあります。
注意が必要なバリア機能の低下ですが、実は日常生活のちょっとした工夫で予防することができます。
まず、皮膚を洗いすぎないことが大切です。
皮膚を清潔に保つことはもちろん大切ですが、体を洗う際にナイロンタオルでゴシゴシ洗ったり、石鹸をつけすぎたりすることはバリア機能の低下に繋がります。石鹸は良く泡立てて擦らずに優しく洗い、ぬるめのお湯でよくすすぎましょう。
次に保湿を行いましょう。
朝、入浴後、就寝前など時間を決めて、全身を保湿することを1年通して行うことをお薦めします。
また紫外線は日焼けにより皮膚に炎症を起こさせ、刺激となります。
また太陽の熱はそれだけで皮膚表面の水分を蒸発させ、バリア機能を低下させます。日差しの強い日はもちろん、外出の際は季節を問わず紫外線対策を行いましょう。
バリア機能は皮膚本来の大切な働きです。バリア機能の低下を予防して、一年中健康な皮膚を保ちましょう。
嵯峨 真輝 (さが まき)先生
学生の頃から小児皮膚科や女性特有の皮膚科疾患に特に興味を持って学んできました。私自身も妊娠・出産を経験し、子供を育てながら医師の仕事を続けております。