2022.12vol.32
本日はミネラルと皮膚についてお話ししようと思います。
ミネラルとは、体を構成する元素のうち、酸素、炭素、水素、窒素を除いたものです。
体の機能の維持・調節に必要なものであり、「無機質」とも呼ばれます。ミネラルは体内で合成できないので食物から摂取する必要があります。
その中でも不可欠なものを「必須ミネラル」と呼びます。必須ミネラルには以下の16種類があります。
ナトリウム・マグネシウム・リン・硫黄・塩素・カリウム・カルシウム・クロム・マンガン・鉄・コバルト・銅・亜鉛・セレン・モリブデン・ヨウ素
これら必須ミネラルが不足すると体に不調を来します。
しかし、多くとれば良いというわけではなく、取り過ぎてもいけません。つまり、ほどよく摂ることが大切なのです。
このように大切な必須ミネラルですが、本日は特に皮膚の健康維持に関わるものについてお話します。
①亜鉛
日本人の亜鉛摂取量は平均的にやや不足気味です。
亜鉛は発育や成長を助け、皮膚代謝や糖代謝、免疫にもかかわっています。欠乏すると味覚障害や皮膚炎、食欲不振、免疫機能の低下などを引き起こすことがあります。
汗で排出されやすいため、夏は意識的に摂取することが勧められます。亜鉛が不足すると皮膚にかゆみが出やすかったり薄くなったりします。
また反対に摂りすぎると吐き気や下痢を誘発するので、サプリメントを利用する際には厚生労働省が定めた摂取量上限を超えないよう注意が必要です。(耐容上限量は、18~29歳の男性で40mg、30~64歳の男性で45mg、18~64歳の女性で35mgです。)
亜鉛は牡蠣(かき)に豊富に含まれているほか、肉類や魚介類、豆類、種実類、穀物など多くの食品に含まれています。
②マンガン
マンガンは平均的な日本人の食事で過不足なく摂取できています。酵素の活性化を促進するミネラルで、皮膚の代謝にも関わります。
マンガンを多く含む食品には海藻類、お茶があります。
③銅
日本人は平均的な食事で銅を十分に摂取できています。銅は赤血球の形成を促し、体内酵素の正常な働きと骨の形成を助けます。
不足すると皮膚のターンオーバーが乱れることがあります。銅を多く含む食材としては、魚介類、肉類、豆類があります。
④マグネシウム
日本人の平均摂取量は推奨値に比べやや不足です。
マグネシウムは皮膚の細胞の代謝やタンパク質合成、筋肉や神経の機能、体温・血圧調整など、さまざまな生化学反応に関与します。マグネシウムの不足は、皮膚炎のほか骨の形成、神経過敏などあらゆる影響をもたらします。食事で多少過剰となっても腎臓から排出されますが、薬剤で多量に摂取し過ぎると下痢を起こす可能性があります。
マグネシウムは、海藻類、魚介類、豆類に多く含まれます。
⑤ヨウ素
日本人のヨウ素の平均摂取量は十分です。
ヨウ素は細胞の新陳代謝や甲状腺ホルモン・タンパク質の合成に関係しています。不足すると皮膚の新陳代謝が悪くなり皮膚がくすみやすくなります。しかし取り過ぎると甲状腺機能に支障を来すことがありますので注意が必要です。ヨウ素を多く含む食材には、昆布、ひじきなどの藻類や魚介類があります。
⑥カルシウム
日本人の平均摂取量は推奨量に比べてかなり不足しています。
体に最も多く存在するミネラルで、骨や歯を構成する成分になるほか、血液や筋肉、神経にも存在します。また皮膚のターンオーバーにも関与します。
また、カルシウムは皮膚の水分量を保つことや、精神の安定に関与することが知られています。ぐっすり眠り成長ホルモンが分泌されると傷ついた皮膚が修復されます。
カルシウムの不足は骨がもろくなる原因となり、特に閉経後の女性では骨粗鬆症の原因となります。
睡眠不足や皮膚の乾燥やターンオーバーの乱れから皮膚のくすみ、不調の原因ともなります。
カルシウムの過剰摂取は他のミネラルの吸収を抑制するのでサプリメントを飲む場合は多量摂取とならぬよう注意が必要です。
カルシウムを多く含む身近な食材は、魚介類、海藻類、乳製品があります。
カルシウムは、ビタミンDとともに摂取することで吸収効率が高まります。牛乳にはもとからビタミンDが含まれているので吸収効率の良い食品と言えるでしょう。日光浴によりビタミンDは増加しますので、天気の良い日にはウォーキングをするとさらに良いでしょう。
全てのミネラルを適正範囲で摂取するのは難しいものです。
バランスの良い食事を心がけ、不足しがちなミネラルを食事から補うことを心がけてみてください。
また、化粧品や入浴剤で外から取り入れて効果が見られるミネラルもありますので上手に活用されることをおすすめします。
嵯峨 真輝 (さが まき)先生
学生の頃から小児皮膚科や女性特有の皮膚科疾患に特に興味を持って学んできました。私自身も妊娠・出産を経験し、子供を育てながら医師の仕事を続けております。