2023.06vol.36
今年は例年より早く、各地で猛暑となっております。肌を見せる服を着るようになり、目につくイボが気になると、来院される方が増える季節でもあります。
本日はそんな気になるイボについてお話ししたいと思います。イボには種類があり、それぞれ治療法が違います。また種類別の予防についてもお伝えします。
イボは感染性のウイルス性イボと、感染しない非ウイルス性イボ、大きくふたつに分けられます。
① ウイルス性のイボ
まずは感染性のイボについてご説明します。原因は皮膚の傷から入るウイルスです。ウイルスは皮膚の深くまで侵入し、徐々に皮膚をもりあげてイボを作ります。
ウイルス性のイボで一番多いのは、ヒトパピローマウイルスが原因のもので、皮膚科では疣贅(ゆうぜい)と呼ばれます。この疣贅はさらにA尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)とB扁平疣贅(へんぺいゆうぜい)に分けられます。
A 尋常性疣贅
全身どこでもできますが、手や足底にできやすいイボです。皮膚が硬くドーム状に盛り上がり、表面が白っぽくざらざらしていることが多いです。黒い点々が見えることもあります。これは毛細血管の小さな出血斑です。
B 扁平疣贅
扁平疣贅は顔や手足にできることが多いイボで、わずかに盛り上がる平らなイボです。色は少し褐色がかっており、50代までの女性に多くみられます。皮膚のマッサージで広がってしまうことがあるので要注意です。
C 伝染性軟属腫(水イボ)
疣贅と違い、伝染性軟属腫ウイルスが原因でできる小さなお子さんによく見られるイボです。お米の半分くらいまでの大きさで、白く、表面に光沢があり、中央がへこむ特徴的な見た目です。プールで感染することが多いです。
疣贅の治療には、綿棒を液体窒素に浸して患部に接触させる凍結療法が行われます。補助的に外用や内服を行うこともあります。ウイルスは傷口から入りますので、傷を放置せず絆創膏で覆う、早く治す事が肝要です。特に色々なものに触れる手からウイルスがうつることが多いので手荒れには注意し、良く保湿するなど傷ができないようにケアをすることが有効な予防法と言えます。疣贅自体を気にして触って体の他の部分にうつってしまうこともあるので、疣贅はあまり触らない方が良いでしょう。
水いぼは経過観察で治療せずに様子を見る場合と、ピンセットのような器具で除去する、疣贅と同じ凍結療法、硝酸銀を用いるなど様々な治療法があります。
② 非ウイルス性イボ
非ウイルス性のイボは、加齢によりできます。
D 脂漏性角化症(老人性イボ)
紫外線と加齢が大きな原因となりますので、紫外線を受けやすい顔や頭部、手の甲に起こりやすいイボです。褐色から黒色で表面はざらざらして盛り上がっているのが特徴です。
E軟性線維腫
首、脇の下、足の付け根にできる、肌色から褐色の盛り上がる柔らかいイボです。キノコのように基部が細く先が膨らむ形になることがあります。脂漏性角化症とちがい表面はざらざらしていません。
治療法については凍結療法が良く用いられます。軟性線維腫で基部がとても細いときは医療用ハサミで切除することもあります。医療用レーザーが用いられることもあります。他に、角質を柔らかくする外用薬や内服が有効なこともあります。
脂漏性角化症は紫外線が原因ですので、日常的に日焼け止めを使うことが予防になります。軟性線維腫は摩擦が原因でできることがありますので、ネックレスや首元にふれる衣類を着用しないようにすることで予防ができます。
いずれのイボも放置していると大きくなったり色が濃くなったり、数が増えたりしますので、早めに皮膚科受診をして治療を受けるのが良いでしょう。病院に行かれない場合など、市販薬でも対応ができないわけではありません。薬局で販売されている市販薬のヨクイニンがイボの治療に効くとされています。しかし時間がかかることが多いため、早く治したい方には適しません。
また市販薬のサリチル酸ワセリンは角質を柔らかくする薬で、タコやウオノメの治療にも使います。タコと同様に角質が盛り上がるイボにも効果が認められます。しかしイボの種類や大きさにより効果のある場合とない場合と様々です。また皮膚が過敏に反応して刺激感や皮むけなど副作用がある場合もあります。顔への使用は避け、先ずは一部だけ塗って問題が無ければ少しずつ塗る範囲を広げるようにして慎重に使いましょう。
イボは昔からありふれた疾患ですので、他にも油や植物の種や葉の汁を塗るなどの民間療法があります。実際に効果を感じる方もあるようですが、かぶれやアレルギーを引き起こす可能性から積極的にお勧めできるものはありません。
それぞれのイボに予防法がありますので、予防を心がけるのも大切でしょう。これからの季節、イボに負けずに自信をもって肌を見せていきたいですね。
嵯峨 真輝 (さが まき)先生
学生の頃から小児皮膚科や女性特有の皮膚科疾患に特に興味を持って学んできました。私自身も妊娠・出産を経験し、子供を育てながら医師の仕事を続けております。