2023.11vol.40
冬の訪れを感じる季節となりました。
寒い季節、皮膚科の診療で、一番よく拝見するのが皮膚の乾燥です。病名としては「皮脂欠乏性皮膚炎」といい、皮脂が少なくなり乾燥して炎症を起こしている状態です。
本日はこの皮脂欠乏性皮膚炎についてお話しします。
皮脂欠乏性皮膚炎は気温の低い寒い季節にできやすく、乾燥してカサカサしたり、皮膚が細かく剥がれたり、ひび割れたり、時には出血したりします。かゆみがでたり、湿疹化したりすることも多いです。
赤ちゃんからお年寄りまで年齢は関係なく出現しますが、年齢を重ねると出やすいため、割合としてはご高齢者の患者さんが多いです。全身どこにでもできますが、赤ちゃんやお子さんは腹部や背部、お年寄りはすねに多く拝見します。
原因はその名の通り皮脂の分泌の低下です。
健康な皮膚には、皮膚表面の角質層に適度な水分が保たれています。適度な皮脂(油分)が皮膚を覆うことで水分の蒸発を防ぎます。角質には他にもセラミドや天然保湿因子が存在し、角質の間を満たし、刺激から皮膚を守る役目=バリア機能を果たします。ところが皮脂の分泌の少ない皮膚は角質に十分な水分を保持できなくなり、その表面が乱れ、バリア機能を失い、少しの刺激でかゆみを感じるようになります。
皮脂分泌減少の原因は様々です。まずあげられるのが加齢。加齢とともに皮脂だけで無くセラミドも合成量が少なくなり、また角質も厚くなりますので皮脂欠乏性皮膚炎になりやすくなります。
他には気温と湿度の低下も大きな原因です。皮脂は気温と湿度の上昇に伴って分泌されるので夏に多く、冬は少なくなります。また、エアコンなどの風が原因となります。意外に多いのが「洗いすぎ」。ゴシゴシとタオルでこすって洗うのは皮膚を傷つけ、角質の水分を奪うことになります。
さて、このやっかいな皮脂欠乏性皮膚炎ですが、予防はできるのでしょうか。
まず、空気が乾燥してきたなと思ったら保湿をすることが何より大切です。保湿乳液やクリームを使って乾燥しやすいすねや腕、背中などを十分に保湿しましょう。朝と入浴後、一日二回くらいできると良いですね。
次に入浴方法です。熱いお湯に入ってボディーソープをつけたタオルでゴシゴシ洗うのは御法度。熱い刺激はかゆみを引き起こしますし、入浴後に乾燥しやすくなりますから、お湯はぬるめで。入浴時に皮脂を取るのは重要なことですが、皮脂を取り過ぎない乾燥肌用のボディーソープや石けんを使いましょう。タオルでは無く手で優しく洗うとさらに良いでしょう。入浴後はしっかりとタオルで拭き、保湿剤を塗ることをおすすめします。
エアコンの風に当たらないようにすることや、加湿器を使用することも大切です。また足元にストーブを置くと、乾燥しやすいすねに熱が直撃して乾燥が極度に進みます。ストーブは少し離して置きましょう。
非常にありふれた疾患の皮脂欠乏皮膚炎。
加齢や季節など、皮脂の分泌低下を防ぐことはできませんが、十分に予防ができる病気です。日々しっかり保湿を心がけ、入浴方法や生活に気をつけて、是非対策をしてみてください。きっと冬本番の寒さや乾燥にも負けない皮膚を手に入れられることでしょう。
嵯峨 真輝 (さが まき)先生
学生の頃から小児皮膚科や女性特有の皮膚科疾患に特に興味を持って学んできました。私自身も妊娠・出産を経験し、子供を育てながら医師の仕事を続けております。