2024.12vol.51
寒さが厳しくなって参りました。
本日は冬によく診察する低温やけどについてお話しします。
低温やけどとは、体温より少し高めの温度のものが長時間皮膚に接し続けることにより起こるやけどです。原因になるものは湯たんぽ、カイロ、お手洗いの暖かい便座(暖房便座)が代表的です。最近はノートパソコンによるものも注目されています。
熱湯などによる通常のやけどに比べ、見た目にはあまり変化がなく、痛みも少ないため軽症のように感じる低温やけどですが、実は通常のやけどよりも治りにくいものが多いのです。
通常のやけどは、皮膚に高温のもの、例えばストーブや熱湯、蒸気、熱した油、フライパンなどが触れることによって起こります。とても熱いのですぐに気づき反射で離すため、長時間触れると言うことは通常ありません。ですから真皮浅層までのやけど(Ⅱ度熱傷)がほとんどです。
一方、低温やけどは、「温かい」と感じる程度の熱に長時間触れ続けるため、皮膚の深くまで熱による損傷が進み、深いやけどになり治りにくいことが多いのです。皮膚に貼りっぱなしにした貼るカイロや電気毛布、暖房便座、お風呂のお湯は低温やけどの原因として良く耳にします。
最近はノートパソコンの作業中、太ももに乗せていたパソコンの熱が原因で低温やけどをするというお話も聞きます。パソコンは起動中に熱を発しますので側部や底面から熱を逃がす構造になっています。太ももの上に置いていると衣類がパソコンの熱の廃気を邪魔してしまい熱がこもり机の上に置くより高温になりがちです。それで太ももに低温やけどを発症してしまうのです。
低温やけどの原因は上記ですが、低温やけどのリスクの高い方にも注意が必要です。
・皮膚の薄いお子様や御高齢者
・温度を感じにくくなっている御高齢者やご病気の方
・眠気の強い方(催眠作用のある薬を服用中など)
・お酒に酔っている方
以上の方は特に低温やけどを起こしやすい方として、周囲の方が予防策を講じる必要があるでしょう。
低温やけどは、はじめは皮膚の赤みやヒリヒリする痛みの症状だけ一見軽いやけどのように見えます。しかし、実際は長時間温かいものに触れていたので、皮膚の深いところまで損傷が及んでおり、水ぶくれや赤み、皮膚の変色が数日後に出てきます。やけどは真皮や皮下組織まで至っていることもあり、治るまでに時間がかかります。
次に治療です。低温やけどは、見た目より深い部分のやけどであることが多いため、通常のやけどのように患部を冷やす、などの処置は意味をなさないことが多いです。自己判断せずにすぐに皮膚科を受診しましょう。
炎症を抑えるステロイド外用剤や被覆材による治療が中心ですが、より重症の場合は手術となる場合もあります。治療後はやけど部位の皮膚が剥がれて乾燥することが多いです。保湿や専用のスキンケア製品を使うことをお勧めします。刺激の少ない敏感肌用の製品がおすすめです。
最後に予防です。
低温やけどは比較的簡単に予防ができます。湯たんぽやカイロを使うときは直接皮膚に触れないようにする、電気毛布や電気カーペットは短時間の使用にする、電気毛布は布団に入る前に温める程度に使い、睡眠中は使わない、といったことで十分に予防ができます。ノートパソコンは太ももにおかず、専用のシートや台を使用するなどしましょう。
カイロはお子様の手の届かないところに保管する、御高齢者やご病気の方の使用する電気暖房製品はタイマー作動にして短時間で消えるようにするなどの工夫が有効です。眠気を誘う薬の使用中やお酒を飲んだあとはお風呂や暖房便座で眠りこまないように特に気をつけましょう。
本日は低温やけどについて詳しくお話ししました。
寒い冬、安全に上手に暖かさを取り入れ、低温やけどを防ぐ工夫をしましょう。
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嵯峨 真輝 (さが まき)先生
学生の頃から小児皮膚科や女性特有の皮膚科疾患に特に興味を持って学んできました。私自身も妊娠・出産を経験し、子供を育てながら医師の仕事を続けております。