2026.7vol.60
本日は皮膚科医から見たスキンケアの重要性についてお話ししたいと思います。
スキンケアは単に見た目を整えることと考えている方は少なくなりません。しかし、医学的には「皮膚という臓器の機能を維持するために必要不可欠なお手入れの習慣」と言えます。
皮膚は、成人で面積約1.6㎡、重量が体重の約16%を占める、人の体の中で最大の「臓器」です。全身を覆い、外部の刺激から体を守るバリア機能のほか、体温の調節、感覚受容など、皮膚は生命維持に大きな役割を担っています。健康な皮膚はターンオーバー(皮膚の生まれ変わり)が正常に保たれ、清潔で、しっとりと適度に保湿されている状態です。このような皮膚は見た目にもキメが整い透明感があり、清潔でみずみずしくハリがあります。
では、皮膚を健康に保つためのスキンケアはどのようにすれば良いのでしょうか。スキンケアというと、時間やお金がかかるもの、という印象を持っている方もありますが、そんなことはありません。健やかな肌を保つために最も欠かせないことは高額な美容液やエステでの施術ではありません。
「洗浄」「保湿」「紫外線予防」です。
この3つを毎日確実に行う習慣が正しいスキンケアです。ひとつずつご説明します。
①洗浄
スキンケアというと「皮膚に何を塗るか」ということに注目しがちですが、汚れを落とす「洗浄」もとても大切です。皮膚表面には脂腺から分泌された皮脂、古い角質、空気中の汚れ(ほこり、排気ガスなど)が付着します。このような皮膚の汚れをそのままにしていると刺激になり炎症を引き起こします。炎症が長引くと色素沈着となり皮膚がくすんで見えたり、皮膚のターンオーバーが乱れて皮膚のバリア機能が失われたりします。古い角質が適切に除去されないと、皮膚は硬く厚くなり、透明感が失われます。
洗顔料やボディーソープを使わずにお湯だけで洗うという方もありますが、それでは皮脂やお化粧の油分が十分に落ちないため、私は洗顔料やボディーソープを使って汚れを落とした方が良いと考えています。1日2回の洗顔、1日1回の入浴でしっかり洗浄しましょう。しかしゴシゴシこすったり、用量以上に洗浄料を使ったり、頻回に洗ったりすることは乾燥や炎症の原因になりますので避け、優しく洗うことを心がけましょう。
② 保湿
日常の診療において、皮膚科医が最も頻繁に推奨するスキンケアは保湿です。皮膚の最も外側にある角質層は、0.02mmの薄さですが、ここに適度な水分と油分を蓄えることで、外部刺激から身を守る「バリア機能」が備わるのです。角質の細胞はよくレンガに例えられます。角質細胞をレンガとすると、その間を埋めるセメントはセラミド(水分と油分からできた物質)で、これが減ると角質の間に隙間が生じます。
そのような状態では皮膚表面が乾燥して角質がめくれ上がりガサガサします。そして髪の毛が触れるような日常の刺激で敏感にかゆみや赤みを引き起こします。さらに、乾燥した皮膚は小じわができ透明感を失い、見た目の老化にも直結します。冬の空気の乾燥や加齢により皮膚は乾燥しやすくなりますが、しっかり保湿することでバリア機能を保ち、きめ細やかでハリのある若々しい皮膚となるのです。
③紫外線予防
皮膚の老化の原因の約80%は紫外線といわれています。UVA(紫外線A波)とUVB(紫外線B波)は皮膚に及ぼす影響が異なります。UVAは雲や窓ガラスを透過して真皮に達し、しわやたるみを、UVBは表皮のみに影響し、日焼けやシミを引き起こします。両方の紫外線への対策が必要です。紫外線の強い時間帯の外出を避ける、帽子や日傘で日差しを遮るなどご自身の都合に合わせて工夫しましょう。
UVAはPA(++++が最大)、UVBはSPF(50+が最大)で強さを判断します。海水浴や登山には最大値の日焼け止めを選びましょう。普段の買い物程度の外出でしたら最大値の半分くらいのもので良いでしょう。日焼け止めは、汗をかいたり拭いたりすることで取れてしまいます。こまめに塗り直すことも大切です。また、夏だけでなく1年中日焼け止めを使うことをお勧めします。
スキンケアに特別なものは必要ありません。毎日洗浄、保湿、紫外線予防を行い、習慣化することで健康な皮膚を保ち、それが将来のあなたの皮膚の見た目の美しさに繋がります。今一度スキンケアを見直し、正しいスキンケアで健やかな皮膚を目指しましょう。
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嵯峨 真輝 (さが まき)先生
学生の頃から小児皮膚科や女性特有の皮膚科疾患に特に興味を持って学んできました。私自身も妊娠・出産を経験し、子供を育てながら医師の仕事を続けております。